一般社団法人 日本下水道光ファイバー技術協会

技術情報

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下水道のICTを支える下水道光ファイバー

Q&A技術

下水道光ファイバーはどのくらいの管径の下水管きょに布設できるの?

管径 200mm 以上の下水道管きょに布設できます。下水管きょ内に布設する光ファイバーケーブルは、直径 16mm 程度のものが多く用いられています。

下水道光ファイバーは、何心布設すればよいの?

2つの施設をつなげる場合、2心が基本となります。通信ネットワーク全体で必要となる心数は、対象とする施設や計測系システムを決定した上で、それらの通信に必要な心数(基本的に2心単位)と予備心数を含めて設定します。


◆参考資料
「下水道光ファイバー技術マニュアル 計画編 平成27年11月」(一般社団法人 日本下水道光ファイバー技術協会)
「下水道光ファイバー技術マニュアル 通信システム編 平成27年11月」(一般社団法人 日本下水道光ファイバー技術協会)

下水道光ファイバーはどのくらいの情報が送れるの?

伝送量は基本的には通信システム(装置)の性能によるところが大きいです。
以下にメタル線(ADSL)と光ファイバーの通信機能比較の一例を示します。光ファイバーは高速大容量の通信機能があります。

メタル線(ADSL) 光ファイバー
伝送速度 上り 512kbps~900kbps
下り 1.5Mbps~8.0Mbps
100Mbps~10Gbps
能力比 1 12倍~660倍以上
2 時間ビデオ/転送時間 23 分~2時間 100 秒~10 秒
伝送可能距離 数 km 数十 km
信頼性 ◎(低損失、非電磁誘導)
主な用途 簡単な動画配信まで 高精細画像・動画・リアルタイム
双方向通信など

◆参考資料
「下水道光ファイバー技術マニュアル 通信システム編 平成27年11月」(一般社団法人 日本下水道光ファイバー技術協会)

下水道光ファイバーはどのくらいの電気が送れるの?

電気は送れません。送り手側から高出力の光を送り、受光側で光から電気に変換します。ファイバーは通常の通信に使うものを使用し、10 ㎞の伝送距離で75mW 程度の電力を得ることができます。これにより、電源の無い場所で光給電カメラを作動させるなど、小型電気機器の作動が可能です。

光ファイバーでどのようなものが計測できるの?

小型光水位計では管路内水位を計測できます。
光ファイバー式雨量計では雨量観測ができます。
また、光給電カメラでは溢水・浸水などの画像情報を確認することができます。
その他、水温・水質・ひずみなどの計測も可能です。

地震の際にマンホールが浮上しても、下水道光ファイバーは大丈夫なの?

 下水道光ファイバーの特徴の一つに「災害に強い」ということがあげられます。
地震に対しては、地下深く埋設されている下水道管きょに布設されるため、地上部よりも被害率が低いという特徴があります。また、マンホールや管きょのズレ により引張や破損が生じないよう、余長を持たせて施工するため、地震時の被害 は小さいものとなります。

下水道光ファイバーは、汚水・雨水に触れても大丈夫なの?

下水道光ファイバーケーブルは下水道管きょ内に布設するため、汚水やネズミなどへの対策として、SUS材や防食材で被覆されています。また、接続箱など も防水機能を有していますので、汚水や雨水に触れても問題ありません。

なぜ、下水道管理者が下水道光ファイバーを布設する必要があるの?

下水道光ファイバーの特徴の一つとして「自営線による情報通信網が確保できる」ということがあげられます。自営線の確保により地震や浸水などの災害時においても情報通信網が確保でき、ポンプ場・ゲートなどを安全・確実に運転することができます。また、複数ポンプ場などの集中監視や管内水位の「見える化」など、下水道光ファイバーは下水道施設管理の効率化などにも貢献するため、下水道管理者により布設・管理することが有効と考えられます。

下水道光ファイバーは、民間事業者が布設しても良いの?

平成8年の「下水道法」の一部改正により、国・地方公共団体・電気通信事業者などが下水道管きょ内に光ファイバーなどを布設できるようになりました。下水道管理者は民間事業者などに対して、下水道光ファイバーの心線貸しや空間貸しを行うことができます。


民間事業者の情報通信網を利用すれば良いのでは?

A8に示したように、下水道施設は地震や浸水などの災害時においても安全・確実に施設運転を行う必要があり、災害時には情報のスピードと確実性が求められます。このため、耐震性に優れ、災害時においても情報の混乱をきたすことのない下水道光ファイバーを活用することが有効です。
ただし、下水道が取り扱う情報の内容によっては他の通信網が有効なものもあるため、管理する情報の種別に応じて選択利用していくことが有効です。

下水道光ファイバーは、どのような自治体が利用しているの?

東京都や政令指定都市などの大規模都市から、流域下水道、市町村など、様々な事業体が下水道光ファイバーを利用しています。また、その利用用途も様々ですが、多くの事業体で活用されている利用用途は「下水道施設の遠隔監視制御」「降雨量・管路内水位などの監視」「流入量に応じてポンプ場などの運転支援」などが挙げられます。

下水道管きょが通っているところには全て、光ファイバーを布設した方が良いの?

下水道光ファイバーは、1つのポンプ場と処理場をつなげて、処理場側でポンプ場の監視制御を行うといったシンプルな使い方も可能です。また、段階的に下水道関連施設やその他の公共施設などへネットワークを広げていくといった方法もあります。このため、下水道光ファイバーで管理すべき情報を整理した上で、接続対象施設を選択し、情報通信網を整備していくこととなります。


異なる処理区の処理場やポンプ場を下水道光ファイバーでつなげて集中管理できるの?

下水道管路などの下水道施設でつながっていない処理場やポンプ場は、下水道光ファイバーでつなげることはできません。ただし、異なる処理区間でも国道や河川管理用光ファイバー網がある場合は、これらを利用したり、一部区間は民間事業者による情報通信網を活用してつなげることが可能な場合があります。

下水道管きょ内光ファイバーの空間貸し・心線貸しとはどういうものですか?

下水道管きょの有効利用のために、民間通信事業者は下水道管きょ空間内に光ファイバーケーブルを布設することができます。この場合、民間通信事業者は自治体が定めるルールに基づいてケーブル布設を行い、占用料金ならびに自治体の維持管理費を支払います。これが空間貸しです。
心線貸しとは、下水道管理者が布設した下水道光ファイバー心線を下水道管理以外の目的で民間通信事業者等に貸し出すもので、使用料を徴収しております。

◆参考資料
下水道管きょの使用に関するガイドライン:国土交通省(一般社団法人 日本下水道光ファイバー技術協会ホームページ・情報開示に掲載)
下水道標準条例

下水道光ファイバーを布設する際には、下水を止めないといけないの?

ロボット工法(適用管径φ200~1200mm)の場合は管きょ内 1/3 以下の流量であれば施工可能です。またサドル工法(適用管径φ1200mm 以上)では、水深約 50cm 以下であれば施工可能です。引き流し工法の場合は、流量・水深に特に制限はありません。


◆参考資料
「下水道光ファイバー技術マニュアル ケーブル設計編 平成27年11月」(一般社団法人 日本下水道光ファイバー技術協会)
「下水道光ファイバー技術マニュアル ケーブル施工編 平成27年11月」(一般社団法人 日本下水道光ファイバー技術協会)

下水道光ファイバーの維持管理は、何をしなければいけないの?

下水道管路と光ファイバーケーブルの両方を管理します。さらに光ファイバーケーブル施設の管理はケーブル自体の管理と通信装置側の管理があり、伝送試験などの定期保守と巡回保守を実施します。(維持管理の内容は下記を参照してください)


◆参考資料
「下水道光ファイバー技術マニュアル ケーブル維持管理編 平成27年11月」(一般社団法人 日本下水道光ファイバー技術協会)

下水道管きょの改築(布設替えや更生)の場合、光ファイバーはどうするの?

管きょの改築工事前に光ケーブルをバイパスルートに仮移設し、管きょ改築終了後、改めて光ケーブルを管内に戻します。仮設ルートは通常は電柱を利用した架空ルートですが、支障が無ければ地上等に仮置きします。更生管の場合は、管内径が小さくなりますので、管きょに戻す際の工法が変わる場合があります。

新設する下水道管きょに光ファイバーを布設するには、どうするの?既設管きょに布設するよりは安くなるの?

光ファイバーケーブル布設用に開発された管材(遠心力鉄筋コンクリートまたは塩化ビニル管)を使用して施工する工法(情報対応管工法)があります、情報対応管はあらかじめ管内にケーブル布設用の保持具またはサヤ管が設置されており、ここにケーブルを布設していく工法で、既設管路へのロボット布設工法などよりは安価に施工できます。


◆参考資料
「下水道光ファイバー技術マニュアル 計画編 平成27年11月」(一般社団法人 日本下水道光ファイバー技術協会)
「下水道光ファイバー技術マニュアル ケーブル布設編 平成27年11月」(一般社団法人 日本下水道光ファイバー技術協会)

下水道光ファイバーの布設は、下水道事業として行うの?

下水道管理用光ファイバーの布設は通常の下水道事業として実施できます。また、一般利用を兼ねた光ファイバーケーブルを布設し、事業所や一般家庭の排水量検針などを行う場合は、新世代下水道支援事業制度を活用して整備が可能です。
その他、下水道事業以外でも利用用途によって、総務省所管、内閣府所管などの各省庁での事業メニューがあります。



◆参考資料
「新たなICT を用いた情報管理における下水道光ファイバーの活用検討 2012年8月」(一般社団法人 日本下水道光ファイバー技術協会)

下水道光ファイバーを布設する場合は、補助金などはあるの?

A19に示すように、下水道事業として実施する場合は、「下水道管理用光ファイバー整備計画策定」に対して 1/3(補助上限額 1,000 万円)の交付金が出ます。
また、下水道管理用光ファイバーの整備に関しては、公共下水道の場合 5.5/10~1/2(利用用途による)の交付金が出ます。


◆参考資料
「新たなICT を用いた情報管理における下水道光ファイバーの活用検討 2012年8月」(一般社団法人 日本下水道光ファイバー技術協会)

下水道光ファイバーを布設するには、計画・実施設計などが必要なの?

下水道光ファイバーの利用用途は様々あり、利用用途や対象施設範囲の拡張なども可能です。このため、下水道光ファイバーの整備にあたっては「下水道管理用光ファイバー整備計画」を策定し、その必要性・利用用途や高度情報化への対応方針などを検討する必要があります(A20 に示すように、計画策定費には交付金が出ます)。
計画策定後は、実施設計、整備工事、維持管理と、下水道管きょ整備と同様のながれで下水道光ファイバーの整備・管理を行っていきます。


◆参考資料
「下水道管理用光ファイバーの整備計画策定及び設備管理システム構築に関する検討 平成14年3月」(一般社団法人 日本下水道光ファイバー技術協会)
「下水道光ファイバー技術マニュアル 計画編 平成27年11月」(一般社団法人 日本下水道光ファイバー技術協会)
「下水道光ファイバー技術マニュアル 通信システム編 平成27年11月」(一般社団法人 日本下水道光ファイバー技術協会)
「下水道光ファイバー技術マニュアル ケーブル設計編 平成27年11月」(一般社団法人 日本下水道光ファイバー技術協会)
「下水道光ファイバー技術マニュアル ケーブル施工編 平成27年11月」(一般社団法人 日本下水道光ファイバー技術協会)
「下水道光ファイバー技術マニュアル ケーブル維持管理編 平成27年11月」(一般社団法人 日本下水道光ファイバー技術協会)

下水道光ファイバー事業は、いくらくらいかかるの?

下水道光ファイバーの事業費は、その対象範囲や利用用途、対象施設、施工条件などにより大きく変わります。このため、個別に概算事業費算定を行う必要がありますが、おおよその目安を示します。
対象となる拠点施設の数を a 箇所、拠点一箇所当たりの通信装置の機器据付工事費を20百万円(機器費含む)
拠点施設間の距離を b km
1km 当たりの光ファイバーケーブル布設工事費を20百万円(ケーブル費含む)とすると、
概算事業費の目安= a ✕ 20百万円+b ✕ 20百万円 となります。
また、別途通信装置等の維持管理費も必要となります。

なお、小型光水位計等を設置する場合は、水位計機器費および設置費が必要となります。
参考として、B-DASH 事業での小型光水位計 5 台、光変換装置などの機器費は10百万円程度でした。

◆参考資料
「下水道管理用光ファイバーの整備計画策定及び設備管理システム構築に関する検討 平成14年3月」(一般社団法人 日本下水道光ファイバー技術協会)
「下水道光ファイバー技術マニュアル 計画編 平成27年11月」(一般社団法人 日本下水道光ファイバー技術協会)

下水道光ファイバーの費用対効果を検討するにはどのような項目について検討すれば良いのですか?

A22 と同様、費用効果もその利用用途や対象施設などにより大きく変わります。このため、個別に概算事業費や費用効果を算定する必要があります。検討するには次のような項目が挙げられます。
・遠方監視制御や集中管理による効果
遠方監視制御や集中管理により少ない人材で確実・効率的運転管理が可能、統合管理による総合管理効果など
・管路内の見える化による浸水対策支援の効果
起動・停止など的確なポンプ運転による浸水被害軽減効果、エネルギー削減効果、管路・ポンプ等施設能力把握による対策施設計画策定効果、先行待機ポンプと同等の施設運用効果など
・災害時への活用効果
災害に強い通信網の確保、防災ネットワークへの活用効果など
・施設増加、下水道機能の多様化に対応可能な人材配置など人的効果
技術力を持つ人材確保が困難な中で、見える化による総合判断力・技術力の向上による質の高い運営管理が可能
・複数施設の集中管理によるエネルギーの効率的管理、維持管理費の低減効果

◆参考資料
「下水道管理用光ファイバーの整備計画策定及び設備管理システム構築に関する検討 平成14年3月」(一般社団法人 日本下水道光ファイバー技術協会)
「下水道光ファイバー技術マニュアル 計画編 平成27年11月」(一般社団法人 日本下水道光ファイバー技術協会)

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